「ジャケットの表地と裏地で素材が違うが、組成はどう書けばいいのか」「スウェットの袖口のリブにポリウレタンが入っているが、身頃と分けて書くべきか」。裏地やリブが付いた服の品質表示では、部位ごとの書き分けで迷う方が多くいらっしゃいます。
結論から書きます。素材の違う部位がある服は、「表地」「裏地」「リブ部分」のように部位名を付けて、部位ごとに組成を書き分けます。全体を一つの混率にまとめて書くのではありません。私たちはアパレルOEM会社として、裏地付きのアウターやリブ付きのカットソーの表示を作るたびに、この書き分けを確認しています。
1. 部位別に書く理由
組成表示は、消費者がその服の素材を知り、扱い方を判断するためのものです。表地が綿で裏地がポリエステルの服を、重さの割合で「綿70% ポリエステル30%」とまとめて書くと、どこに何が使われているかが分からなくなります。そのため、素材の違う部位がある場合は、部位を示してそれぞれの組成を書く形が基本になります。表示を見て「裏地はポリエステルだから静電気が起きやすい」「表地は毛だから縮みやすい」と判断できることが、部位別表示の意味です。
2. 基本の書き方
部位名のあとに、その部位の組成を書きます。各部位の中では、通常の組成表示と同じく繊維名と混率を並べます。
裏地付きのジャケットの例
- 表地 毛100%
- 裏地 キュプラ100%
リブ付きのスウェットの例
- 身生地 綿100%
- リブ部分 綿95% ポリウレタン5%
繊維名は指定用語で書き、部位名は消費者が見て場所を特定できる言葉を選びます。部位名と組成の間は、スペースを空けるなどして読みやすく区切ります。混率の書き方そのもののルールは、別の記事で扱っています。
3. 部位名の付け方のコツ
部位名には決まった言い回しがありますが、実務では次の点を意識すると、校正で戻されにくくなります。
- 一つの製品の中で呼び方をそろえる——「表地」と書いたら対になるのは「裏地」。「表生地」「裏布」などと混在させないようにします
- 同じ素材はまとめる——身頃と袖で表地が同じなら、分けずに「表地」として一つにします
- 違う素材は分ける——身頃の裏地と袖の裏地で素材が違うなら、「身頃裏地」「袖裏地」のように分けて書きます
- 消費者に通じる言葉を使う——工場内で使う略称や専門的な呼び名は避けます
4. 書き漏れやすい部位
部位別表示で多いのは、書き分けの間違いより「書き漏れ」です。次の部位は、生地の手配表で素材を確認してください。
- 袖裏——身頃の裏地と別の素材にしていることがあります
- 衿や袖口のリブ——身生地と同じ素材だと思い込みやすい部位です。ストレッチ性を出すためにポリウレタンが入っていることがよくあります
- 切り替えの別布——デザインで異素材を組み合わせた部分です
- フードの裏——身頃と別の生地を使っている場合があります
ポケットの袋布や芯地、小さな飾りなど、どこまで表示が必要かには規程上の扱いがあります。判断に迷う場合は、消費者庁の資料や窓口で確認してください。
5. 洗濯ネームへの収め方
部位が増えるほど、組成の行数も増えます。洗濯ネームの限られたスペースに収めるため、次の順でレイアウトを考えます。
- 部位ごとに1行ずつ、部位名と組成を並べる
- 行数が多いときは、ネームの幅や長さを見直すか、表裏の両面に分ける
- 文字を小さくしすぎて読めなくならないよう、原寸で確認する
洗濯表示の記号は部位ごとに分けず、製品全体で一組です。部位によって洗濯への強さが違う場合は、いちばん弱い部位に合わせて記号を決めます。この決め方は、複数の素材を使った服をテーマにした別の記事で扱います。
6. 確定前のチェック
最後に、生地の手配表・仕様書と、ネームの原稿を1行ずつ照らし合わせます。部位の数が手配表と合っているか、各部位の混率の合計が100%になっているかを確認してください。仕様変更で裏地の素材を差し替えたのに、ネームの原稿が古いまま、という事故は珍しくありません。素材を変えたら、ネームも同時に直す習慣を付けておくと安心です。追加生産で生地の手配先が変わったときも、裏地やリブの混率が変わっていないかを毎回確認してください。