「ポリエステルの製品を作ったが、洗濯表示は綿と同じでいいのか」。ジャージやユニフォーム、ブラウス、エコバッグなど、ポリエステルは私たちが扱う素材の中で綿の次に多く、同じ質問を繰り返し受けます。答えは「同じではない」です。ポリエステルは綿より丈夫な一方で、熱に対する扱いがまったく異なるからです。
結論から書きます。ポリエステル製品の洗濯表示は、洗い方は綿より緩くできる一方、タンブル乾燥とアイロンの記号は綿より厳しくするのが基本です。理由は、ポリエステルが熱で縮み・てかり・変形を起こしやすい素材だからです。加えて、プリント・プリーツ・起毛といった加工がある場合は、生地そのものより加工の耐久性で記号を決めます。私たちはアパレルOEM会社として、ポリエステル製品の表示を決めるたびにこの順で考えています。実際に使っている組み合わせを、素材の性質から順に説明します。
1. ポリエステルの性質を4つ押さえる
記号を選ぶ前に、素材が洗濯のどの工程で傷むのかを知っておく必要があります。ポリエステルで押さえるべき性質は次の4つです。
- 水に強い——吸水性が低く、水洗いで縮んだり型崩れしたりしにくい素材です。洗濯記号を厳しくする理由はほとんどありません
- 熱に弱い——高温でてかりや変形が出ます。乾燥機の熱風やアイロンの直接当てが最大の弱点です
- 油汚れを抱え込む——皮脂や油汚れが繊維に付きやすく、いったん付くと落ちにくい性質があります。洗濯槽の中で他の衣類の汚れを拾う「再汚染」も起きます
- 静電気と毛玉——乾燥した環境で静電気が起き、摩擦で毛玉ができやすい素材です。ネットに入れて洗う配慮が有効です
この4つを踏まえると、「洗いは緩く、熱は厳しく」という方針が自然に導かれます。
2. 基本パターン:無地のポリエステル100%
加工のないポリエステル100%の生地であれば、私たちは次の組み合わせを基本にしています。
- 洗濯——洗濯桶に「40」。生地が薄い場合や、糸の撚りが甘く毛羽立ちやすい生地では下線1本を入れて「弱い処理」にします
- 漂白——白無地なら三角形のみでも通りますが、私たちは色物と同様に三角形に斜線2本(酸素系のみ可)を基本にしています。ポリエステルの染色に使われる染料は塩素系漂白剤で変色するおそれがあり、色物と白を同じ工場・同じ表示で管理するほうが事故が少ないからです
- タンブル乾燥——四角に円、点1つ(低い温度)。縮み試験をしていない場合はバツ(禁止)にします。乾燥機の高温は、ポリエステルで最も苦情につながる工程です
- 自然乾燥——四角に縦線(つり干し)。乾きが速い素材なので、平干しにする必要はほとんどありません
- アイロン——点2つ(150℃上限)。薄手の生地や光沢のある生地は点1つ(110℃上限)に落とします。てかりを避けるため、当て布を付記用語で促すこともあります
- クリーニング——円にP(パークロロエチレン及び石油系溶剤でのドライクリーニング可)
綿100%のTシャツと比べると、アイロンの上限が下がり、漂白が厳しくなっているのが分かります。逆に洗濯記号は綿より緩くできる場合が多いのですが、後述する加工の有無で変わります。
3. 加工がある場合は「生地」ではなく「加工」で決める
ポリエステル製品で表示の判断を誤るのは、生地の耐久性だけを見て加工の耐久性を見落としたときです。加工の種類ごとに、基本パターンから変える箇所を挙げます。
昇華転写・フルカラープリント
ジャージやユニフォームに多い昇華転写は、染料を熱で繊維に染み込ませる方法です。高温にさらすと染料が再び動き、色がにじんだり他の部分に移ったりします。タンブル乾燥はバツ(禁止)、アイロンは点1つかバツにし、「裏返して洗う」「他の物と分けて洗う」を付記用語で添えます。
プリーツ加工
ポリエステルのプリーツは熱で形を固定しています。熱を加えれば形が崩れるため、アイロンはバツ(禁止)、タンブル乾燥もバツにするのが原則です。洗濯記号も弱い処理か手洗いに落とし、つり干しでひだを整える前提にします。
フリース・起毛
起毛した面は摩擦で毛玉ができ、熱で毛が寝てしまいます。タンブル乾燥はバツ、アイロンもバツにし、「洗濯ネット使用」を付記用語で入れるのが定番です。洗濯記号は「40」に下線1本で問題ないことが多いです。
撥水・防水加工
撥水剤は洗濯を重ねると効果が落ち、漂白剤や柔軟剤で劣化が早まります。漂白はバツ(禁止)、「柔軟剤は使用しない」を付記用語で入れます。撥水回復のために低温のアイロンやタンブル乾燥を許す製品もありますが、加工剤の仕様書で確認できない限り、私たちは禁止側に倒します。
4. 混紡のときはどちらの弱点も採る
ポリエステルと綿の混紡(いわゆるTC生地)は、綿の「縮み」とポリエステルの「熱」の両方の弱点を持ちます。記号は「厳しいほうを採る」が原則です。例えば綿60%・ポリエステル40%の生地なら、洗濯は綿を考えて「40」に下線1本、アイロンはポリエステルを考えて点2つ、タンブル乾燥はどちらの理由でも低温かバツ、という具合です。ポリエステルの比率が高くなるほど縮みは減りますが、熱の制限は変わりません。
組成表示の書き方についてはこのコラムの別の記事で扱っていますが、指定用語は「ポリエステル」です。「ポリエステル100%」「ポリエステル 65% 綿 35%」のように、繊維名と百分率を並べて記載します。
5. 迷ったときの判断基準
ポリエステル製品で判断に迷うのは、ほとんどが「タンブル乾燥を許すかどうか」と「アイロンを何点にするか」の2点です。私たちの基準は単純です。
- 生地や加工の仕様書に耐熱の記載があれば、それに従う
- 記載がなく、試験もしていなければ、タンブル乾燥はバツ、アイロンは点1つにする
- 試験をして問題がなければ、その範囲まで緩める
表示は「ここまでの処理に耐える」という約束です。ポリエステルは水には強くても熱には弱いという性質を軸に、加工の有無で記号を調整すれば、大きく外すことはありません。自分の製品の組成と加工を確認しながら、上のパターンを当てはめてみてください。