「工場に作ってもらうのだから、品質表示も工場の責任ではないのか」。自社ブランドをOEMで立ち上げる方から、よく受ける質問です。
結論から書きます。品質表示の責任は、洗濯ネームに「表示者」として名前を書いた事業者が負います。OEMで作った場合も、工場が自動的に責任を持つわけではありません。自社ブランドとして売るなら、表示者はブランド側になるのが通常で、表示内容の最終確認もブランド側の仕事です。そのうえで、組成や取扱い方法の「根拠となる情報」を持っているのは工場側なので、両者の役割分担を最初に決めておくことが事故を防ぐ一番の方法です。私たちはアパレルOEM会社として、発注のたびにこの分担を確認しています。
1. なぜ「作った人」ではなく「表示者」なのか
家庭用品品質表示法では、表示を行うのは製造業者・販売業者・表示業者のいずれかで、誰が表示者になるかは事業者間で決めます。消費者から見ると、洗濯ネームに書かれた名前と連絡先が「この表示について問い合わせる相手」です。そのため、表示に名前を出した事業者が内容に責任を負う、という構造になっています。
OEMでは、製品を企画し、自社の名前で売るのはブランド側です。工場の名前は表に出ないのが一般的なので、表示者もブランド側にするのが自然な形です。表示者の基本的な考え方は「家庭用品品質表示法とアパレル」の記事で整理しているので、ここではOEM特有の論点に絞ります。
2. OEMでの役割分担——誰が何を決めるか
表示者がブランド側だとしても、表示の中身をブランドだけで決めるのは現実的ではありません。私たちの現場では、次のように分担しています。
工場(OEM側)が出すもの
- 生地・付属の規格書(繊維の種類と混率)
- 生地メーカーや工場の推奨する取扱い条件(洗濯温度、乾燥方法など)
- 縫製仕様(裏地・芯地・ポケット布など、部位ごとの素材)
ブランド側が決めるもの
- 表示者名と連絡先(名称・住所または電話番号)
- 工場から出た情報をもとにした最終的な表示内容の承認
- 取扱い方法を推奨より厳しめにするかどうかの判断
ポイントは、情報は工場から、承認はブランドからという流れを文書で残すことです。「工場に任せたので中身は見ていない」という状態が、後で問題が起きたときに最も困ります。
3. 表示者名の書き方——OEMでよくある迷い
ブランド名だけでは足りない
表示者名には、事業者の氏名または名称と、住所または電話番号が必要です。ブランド名だけを書いても、消費者が連絡を取れる相手になりません。個人でブランドを運営している場合も、屋号と連絡先を添えます。
工場名を書く必要はない
表示者をブランド側にするなら、製造した工場の名前を洗濯ネームに書く義務はありません。逆に、ブランド側と工場の名前を両方並べると、どちらが問い合わせ先か分かりにくくなるので、私たちは表示者を1社に絞るよう勧めています。
海外工場で作る場合
海外の工場で生産して輸入する場合、海外の製造元の名前だけでは国内の消費者が連絡できません。国内の輸入業者か販売業者が表示者になります。原産国の表示は家庭用品品質表示法とは別の話で、景品表示法の告示に関わるため、表示の要否を個別に確認してください。
4. OEMで起きやすい表示の事故
私たちが見てきた中で多いのは、次の3つです。
- 生地の変更が表示に反映されない——量産の途中で生地の手配先が変わり、混率が変わったのに、洗濯ネームは前の版のまま、というケースです。生地を変えたら表示を見直す、というルールを工場と共有しておきます
- 付属や部位の素材が漏れる——本体は綿100%でも、リブや裏地が別素材のことがあります。部位ごとの表示が必要かどうかを、縫製仕様から確認します
- サンプルと量産で仕様が違う——サンプル段階の表示をそのまま量産に使い、洗い加工の有無などが変わっていたケースです。量産仕様が確定した時点で最終確認します
いずれも、表示者であるブランド側に問い合わせや返品対応が来ます。工場の情報に誤りがあった場合は、取引上の責任を工場に求めることになりますが、消費者に対して最初に対応するのは表示者です。
5. 発注前に取り決めておくこと
トラブルを防ぐため、発注の段階で次の点を仕様書や発注書に残しておくことを勧めます。
- 表示者は誰か(名称・住所または電話番号)
- 組成と取扱い方法の根拠となる資料を、工場が提出すること
- 生地や付属を変更する場合は、事前にブランド側へ連絡すること
- 洗濯ネームの版下を、量産前にブランド側が承認すること
なお、素材を実際より良く見せる表示は、品質表示の問題にとどまらず、景品表示法上の問題にもなり得ます。表示者として名前を出す以上、内容を自分の目で確認する手間は省かないでください。
まとめ
OEMで作った服の品質表示は、表示者として名前を書いた事業者が責任を負い、自社ブランドなら通常はブランド側がその立場になります。工場は根拠となる情報を出し、ブランドが最終承認する。この分担と、生地変更時の連絡ルールを最初に決めておけば、表示の事故はほとんど防げます。