「表地は洗濯機で洗える綿なのに、裏地は水に弱い素材。洗濯表示はどちらに合わせればいいのか」「混紡の生地で、それぞれの繊維の得意不得意が違う場合はどう決めるのか」。複数の素材を使った服では、洗濯表示の決め方で迷う方が多くいらっしゃいます。
結論から書きます。洗濯表示は製品全体で一組です。洗濯・漂白・乾燥・アイロン・クリーニングの記号ごとに、使っている素材の中でいちばん弱いものを探し、それに合わせて決めます。弱い素材は記号ごとに違うことがあるため、素材を一つ選んで全部を合わせるのではなく、記号ごとに判断するのがコツです。私たちはアパレルOEM会社として、裏地付きのアウターや異素材を組み合わせた服の表示を、この方法で決めています。
1. なぜ「いちばん弱い素材」に合わせるのか
洗濯表示は、その製品に対して行ってよい処理の上限を示します。表地が耐えられても、裏地が縮んだり、付属が溶けたりすれば、製品としては傷んでしまいます。製品のどこか一か所でも耐えられない処理は、表示で「可」にできません。部位ごとの組成の書き分け方は別の記事で扱っていますが、洗濯表示は部位ごとに分けず、一組にまとめるのが基本です。
2. 弱い素材は記号ごとに違う
素材にはそれぞれ得意と不得意があります。一つの製品の中でも、洗い方で弱い素材と、熱で弱い素材が別々ということはよくあります。
- 洗濯——水や摩擦で縮みやすい素材(毛、レーヨン、キュプラなど)
- 漂白——塩素系漂白剤で傷む素材(毛、ポリウレタンなど)や、色が抜けやすい染め
- タンブル乾燥——熱で縮む・変形する素材や、ストレッチ糸
- アイロン——熱に弱い繊維(ナイロン、アクリル、ポリウレタンなど)や、プリント・接着の部分
- クリーニング——溶剤で傷む加工や付属
記号ごとに、この中から製品に使われている素材を当てはめていくと、どの素材がどの記号を決めているかがはっきりします。
3. 判断の例——裏地付きのジャケット
表地が綿100%、裏地がキュプラ、袖口にポリウレタン入りのリブ、という製品で考えます。
- 洗濯——表地は家庭洗濯に耐えても、裏地のキュプラは水で縮みやすいため、裏地に合わせて手洗いか家庭洗濯禁止を検討します
- 漂白——リブのポリウレタンと裏地の色を考え、斜線2本かバツにします
- タンブル乾燥——どの素材から見ても、バツ(禁止)が無難です
- アイロン——表地は点3つに耐えますが、リブのポリウレタンに合わせて点を下げます
- クリーニング——素材と付属が溶剤に耐えるかを確認して選びます
このように、記号ごとに決め手になる素材が変わります。付属も同じ考え方で、金属のボタンやファスナー、合成皮革のパーツなどがあれば、それぞれが耐えられる処理を確かめて記号に反映します。
4. 素材どうしの縮みの差にも注意する
それぞれの素材が単独では洗濯に耐えても、縮み方が違えば、製品としては型崩れします。表地と裏地の縮みに差があると、裏地が引きつれて表地にしわが寄ったり、裾から裏地がのぞいたりします。素材ごとの耐性を足し合わせるだけでは分からない問題で、製品の状態で洗ってはじめて見えてきます。表地が綿で裏地がキュプラやレーヨンのように、水での縮み方が違う組み合わせは、特に起きやすい例です。
5. 製品の状態で試験をする
素材ごとの情報だけで記号を決めず、仕上がった製品のサンプルで試験をします。
- 素材ごとの情報から、記号ごとに厳しいほうを選んだ仮の表示を作る
- その表示どおりの方法でサンプルを洗い、縮み・型崩れ・色移り・付属の状態を確かめる
- 問題がなければ確定し、問題があれば記号を厳しくするか、素材の組み合わせを見直す
表示が厳しくなりすぎる場合は、裏地や付属を洗濯に強いものへ替えることで、扱いやすい表示にできることもあります。表示は、素材を選ぶ段階から考え始めるのが理想です。
6. 判断の記録を残す
記号ごとに、どの素材を理由にその記号を選んだのかを記録しておくと、追加生産で素材を替えたときに、どの記号を見直せばよいかがすぐに分かります。複数の素材を使う服ほど、判断の根拠を残しておく価値があります。取引先から表示の理由を聞かれたときにも、記録があれば根拠を示して説明できます。