「ニットの洗濯表示は手洗いにすべきか、洗濯機でもよいのか」「平干しの記号は必ず入れるのか」。ニットやセーターを初めて作るとき、布帛やカットソーとは違う判断が必要になり、手が止まる方が多くいらっしゃいます。
結論から書きます。ニット製品の洗濯表示は「伸びと型崩れ」を軸に決めます。洗い方は弱い処理か手洗い、乾燥はタンブル乾燥禁止と平干しの組み合わせが基本で、素材の違いはアイロンと漂白の記号に表れます。私たちはアパレルOEM会社として、綿ニットやアクリル混のニットの表示を決めるときにこの順で考えています。ここでは毛(ウール)以外も含めたニット全般の組み合わせ例を示します。
1. ニットが洗濯で傷む理由
ニットは糸をループ状に編んだ生地です。ループが動くことで伸び縮みし体になじむ一方、水を含むと重みで伸び、強い水流や脱水で編み目がずれて型崩れします。表示を決める前に、次の3つの弱点を押さえておきます。
- 重みによる伸び——濡れた状態でつるすと、着丈や袖が伸びます
- もみ洗いによる型崩れ・毛玉——強い水流や摩擦で編み目がずれ、表面に毛玉ができます
- 熱による変化——アクリルなど熱に弱い繊維は、乾燥機やアイロンの熱で伸びたり風合いが変わったりします
2. 綿ニット(家庭洗濯可)の組み合わせ例
綿のニットは水に比較的強く、家庭洗濯を前提にしやすい素材です。私たちが基本にしている組み合わせは次のとおりです。
- 洗濯——洗濯おけに「30」+下線2本(非常に弱い処理)。薄手のハイゲージなら下線1本も検討します
- 漂白——三角形に斜線2本(酸素系のみ可)。色物は漂白禁止にする判断もあります
- タンブル乾燥——バツ(禁止)
- 自然乾燥——四角に横線1本(平干し)。濃色は左上に斜線を加えて日陰の平干しにします
- アイロン——点2つ(150℃上限)
- クリーニング——円にP+下線1本(弱い処理)
同じ綿ニットでも、目の詰まったものと甘く編んだものでは縮み方が違います。迷ったら下線2本の側を選びます。
3. アクリル混ニットの組み合わせ例
アクリルは軽く発色がよい一方、熱に弱い繊維です。綿ニットとの違いはアイロンと洗い方に出ます。
- 洗濯——手のマーク入りの洗濯おけ(手洗い)。洗濯機の弱い水流でも問題ないことを試験で確かめた場合は、「30」+下線2本にします
- 漂白——バツ(禁止)か、三角形に斜線2本
- タンブル乾燥——バツ(禁止)
- 自然乾燥——平干し
- アイロン——点1つ(110℃上限)。熱で伸びや光沢の変化が出やすいためです
- クリーニング——円にP+下線1本、または円にF+下線1本
アクリルとナイロンなど複数の繊維を混ぜた糸は、いちばん熱に弱い繊維に合わせて記号を選びます。
4. 家庭洗濯を勧めないニットの組み合わせ例
ビーズや刺繍などの装飾が多いもの、ローゲージで目の粗いもの、洗濯試験で縮みや型崩れが大きかったものは、家庭洗濯禁止(洗濯おけにバツ)を選び、クリーニングを前提にします。この場合も漂白・乾燥・アイロンの記号を並べ、どの処理まで耐えられるかを示します。溶剤による風合いの変化を避けたい場合は、円にF(石油系溶剤のみ)を選ぶこともあります。毛(ウール)を使ったニット特有の縮みの考え方は、ウール製品の記事で扱います。
5. 平干しの記号と付記用語の使い分け
ニットでは「平干し」を記号で示せるのが大きな利点です。記号で示したうえで、記号では伝えにくい注意を付記用語で補います。ニットでよく使うのは次のものです。
- 洗濯ネットを使用してください
- 形を整えて干してください
- 脱水は短時間にしてください
- 摩擦により毛玉が生じることがあります
最後の毛玉の説明は、洗濯ネームのスペースが足りなければ下げ札に回してもかまいません。付記用語は記号と矛盾させないことが原則で、平干しを記号で示しているのに「つり干ししてください」と書くような食い違いは避けます。
6. 決める前に試験で確かめること
ニットは同じ素材でも、ゲージや編み方、糸の撚りで洗濯への強さが大きく変わります。サンプルの段階で表示どおりの方法で一度洗い、寸法の変化・型崩れ・毛玉・色落ちを確認してから記号を確定してください。特に袖口や裾のリブは身頃と伸び方が違うため、洗う前後で寸法を測って比べると判断しやすくなります。試験をしていない場合は、より厳しいほうの記号を選ぶのが安全です。