「趣味の延長で作った服を、ネットショップで少しずつ売っています。品質表示のタグって、個人でも付けないといけないんでしょうか」——ここ数年、この質問を受ける機会が明らかに増えました。
結論から書きます。売っているのが個人でも、対象品目にあたる衣類なら品質表示は必要です。「事業者かどうか」は法人か個人かで決まるものではありません。私たちはアパレルOEM会社として量産品の表示を日常的に組んでいますが、ハンドメイド販売でつまずく箇所は量産とは少し違うところにあります。順に整理します。
1. 「個人だから対象外」は成り立たない
衣類の品質表示は家庭用品品質表示法にもとづく義務です。この法律が表示を求めている相手は製造業者・販売業者・表示業者であって、条文に売上規模や法人格の条件は出てきません。ネットショップやイベントで継続的に販売しているなら、販売する側として表示の責任を負う立場にあると考えるのが自然です。
逆に、友人に譲る、自分が着ていた私物をフリマアプリで一度手放す、といった行為は販売事業とは言えません。境目は「反復・継続して売っているか」です。月に数点でも、ショップを開いて売り続けているなら義務がある側だと考えてください。「趣味だから」「小規模だから」という理由で外れる仕組みにはなっていません。
2. すべての手作り品が対象なわけではない
ただし、繊維製品なら何でも対象というわけでもありません。対象となるのは繊維製品品質表示規程に列挙された品目です。Tシャツ、シャツ、ブラウス、ズボン、スカート、ワンピース、コートといった一般的な衣類はここに含まれます。寝具やタオルなども品目として挙げられています。
一方で、規程に挙がっていない小物類は品質表示法の対象外です。布製のヘアアクセサリーやブローチのような雑貨はここに入ることが多く、同じミシンで作っていても衣類と扱いが変わります。自分の作っているものがどちらかは、消費者庁が公開している品目の一覧を実際に開いて確認してください。ネット上のまとめ記事ではなく、原文を見る癖をつけたほうが安全です。
3. 表示する内容は3つ
対象品目の衣類に表示するのは、基本的に次の3点です。
繊維の組成
使っている繊維の名称と混用率を、指定された繊維名で書きます。「コットン」ではなく「綿」、「ポリ」ではなく「ポリエステル」のように、規定された用語を使うのが原則です。生地を仕入れて作っている場合、組成は生地屋さんの表示が根拠になります。仕入れ時の情報は必ず控えておいてください。ここを推測で書くのがいちばん危険です。
家庭洗濯等取扱い方法
いわゆる洗濯表示記号です。現在はJIS L0001にもとづく記号を使います。洗い方・漂白・乾燥・アイロン・商業クリーニングの各系統から、その製品に合うものを選んで並べます。素材と副資材(プリント、接着芯、装飾パーツ)の両方を見て、いちばん弱いものに合わせるのが基本の考え方です。
表示者名と連絡先
見落とされがちですが、これも表示事項です。表示した者の氏名または名称と、住所または電話番号を書きます。
4. 自宅住所を書きたくない場合
ハンドメイド販売でいちばん相談が多いのがこの点です。ここは条文の書き方が助けになります。求められているのは「住所または電話番号」であって、両方ではありません。自宅住所を製品に載せたくないなら、連絡の取れる電話番号を表示する形で要件を満たせます。
名称についても、屋号やブランド名を使うこと自体は問題ありません。ただし目的は「何かあったときに消費者が連絡できること」ですから、実体のない表記や、連絡手段と結びついていないブランド名だけの表示では意味がありません。屋号を使うなら、その屋号で問い合わせを受けられる状態にしておいてください。
5. 下げ札だけで済ませない
品質表示は、購入者が製品を使っている間に確認できる状態であることが前提です。糸で仮止めした下げ札は購入後すぐ外されますし、外れれば情報は残りません。組成と取扱い方法は、縫い付けタイプのタグで本体に付けるのが実務上の標準です。
ハンドメイドの場合、当て布に印刷して縫い代に挟み込む方法がよく使われます。このとき、洗濯を繰り返しても文字が読めるかどうかだけは事前に確認してください。数回の洗濯で消えるインクだと、表示が付いていない状態と実質的に変わらなくなります。
6. 特定商取引法の表示とは別物
最後に混同されやすい点を。ネットショップを開くと「特商法に基づく表記」のページを求められますが、あれは通信販売のルールであって、製品に付ける品質表示とは根拠法が違います。ショップページに事業者情報を載せたからといって、製品タグの表示義務がなくなるわけではありません。二つは別々に用意するものだと整理しておいてください。
まとめ
ハンドメイドでも、継続して衣類を販売するなら品質表示は必要です。とはいえ、やることは「組成」「取扱い方法」「表示者名と連絡先」の3点を、洗っても読めるタグで本体に付けるだけです。住所の代わりに電話番号を書ける点も含めて、思っているほど重い作業ではありません。売る点数が増えてから慌てるより、最初の1枚から入れておくほうが確実に楽です。