「デリケートな服だから手洗いマークを付けておけば安心だろう」「手洗いと家庭洗濯禁止は何が違うのか」。洗濯表示を決めるとき、手洗いマークの扱いで迷う方は多くいらっしゃいます。なんとなく付けた手洗いマークは、お客様にとっては手間の多い表示になり、作り手にとっても判断の根拠が曖昧なままになります。
結論から書きます。手洗いマークは「家庭で洗えるが、洗濯機には耐えられない製品」に付ける記号です。洗濯機の弱い水流なら耐えられる製品には下線付きの洗濯おけを、家庭で水洗いさせたくない製品には家庭洗濯禁止の記号を選びます。私たちはアパレルOEM会社として、サンプルの洗濯結果を見ながらこの3つを選び分けています。
1. 手洗いマークの意味
JIS L0001の手洗いの記号は、洗濯おけの中に手を描いた形です。意味は「液温は40℃を限度とし、手洗いができる」です。ほかの洗濯記号と違い、記号の中に温度の数字は入りません。2016年12月より前の旧表示では、洗濯おけの中に「手洗イ」と文字で書く形でした。旧表示との対応は別の記事で扱っています。
この記号は、洗濯機での洗濯を想定していないことを示します。洗濯機に「手洗いコース」などを備えた機種もありますが、水流の強さは機種によって異なります。表示を決める側は、あくまで「手で押し洗いする」前提で耐えられるかどうかを判断します。
2. 似ている記号との違い
手洗いマークと混同しやすい記号が2つあります。
洗濯おけに数字と下線2本
たとえば「30」に下線2本は、液温30℃を限度に洗濯機で非常に弱い洗濯ができることを示します。洗濯機を使ってよい点が、手洗いマークとの大きな違いです。お客様にとっては、手洗いより手間が少ない表示です。
洗濯おけにバツ
家庭での洗濯禁止を示します。手洗いもできないという意味です。水に濡れること自体で縮みや風合いの変化が起きる製品に付けます。この記号を付ける場合は、クリーニングの記号で、どの方法なら処理できるかを示しておくことが大切です。
3. 手洗いマークを付ける基準
私たちが手洗いマークを選ぶのは、主に次のような製品です。
- 洗濯機の水流で型崩れする製品——ゆるく編んだニット、薄く柔らかい生地の服など
- 装飾が取れやすい製品——ビーズやスパンコール、手作業の刺繍などが付いたもの
- 水には耐えるが、もみ洗いや脱水に弱い製品——強くねじると毛羽立ちやしわが残る素材
- 芯地を使った小物や服——洗濯機の水流で芯地がずれたり、表面が波打ったりしやすいもの
判断の根拠は、サンプルの洗濯試験です。洗濯機の非常に弱い処理で問題がなければ、下線2本の洗濯おけを選びます。手洗いでは問題がなく、洗濯機では型崩れや装飾の脱落が出た場合に、手洗いマークを選びます。
4. 手洗いマークを安易に付けないほうがよい理由
「念のため手洗い」にしておくのは、一見安全に見えます。ただ、次のような不利な面があります。
- お客様が洗う手間を嫌い、購入をためらうことがある
- 手洗いの表示を守らず洗濯機で洗われ、結果的に事故が起きる
- 本当は洗濯機で洗える製品なのに、扱いにくい印象を与える
表示は「ここまでの処理に耐える」という約束です。厳しくしすぎるより、試験の結果に合わせて正しい上限を示すほうが、お客様にも製品にもよい結果になります。
5. 手洗いマークと組み合わせる記号と付記用語
手洗いマークを付ける製品は、乾燥やアイロンにも弱いことが多くなります。タンブル乾燥はバツ(禁止)、自然乾燥は平干しやつり干しを製品の形に合わせて選ぶのが一般的です。付記用語では、次のような注意を添えます。
- 押し洗いしてください
- 脱水は短時間にしてください
- 形を整えて干してください
手洗いマークで洗い方を示しているのに「洗濯機で洗えます」と書くなど、記号と付記用語が食い違わないよう注意してください。
6. 迷ったときの決め方
迷ったら、まず洗濯機の非常に弱い処理で試験をします。問題がなければ下線2本、問題があれば手で洗って確かめ、それでも問題が出れば家庭洗濯禁止を検討する、という順で考えると判断がぶれません。試験をしていない段階で記号を確定させる場合は、より厳しいほうを選んでおき、試験後に見直すのが安全です。