「海外のお客さんにも売りたい。洗濯表示は英語で作り直さないといけないのか」——越境ECや海外の展示会に出るブランドから、必ず出る質問です。
結論から書きます。洗濯表示の記号そのものは国際規格と共通なので作り直す必要はありません。作り直すべきなのは「記号の脇に添える英語の文言」「繊維名の英語表記」「原産国と表示者」の3点で、しかもその要求は国ごとに違います。私たちはアパレルOEM会社として、国内向けと海外向けのケアラベルを日常的に手配しています。その現場で使っている考え方を、米国向けと欧州向けを軸に整理します。
1. 記号は「世界共通」と考えてよい
日本の洗濯表示はJIS L0001で定められていますが、この規格は国際規格ISO 3758と整合するように作られています。2016年12月に切り替わった現在の記号(洗濯おけ・三角・四角・アイロン・円)は、欧州やアジアの多くの国で使われている記号と同じ体系です。
つまり、日本向けにJIS L0001で正しく作った記号は、そのまま海外の消費者にも「読める」ものになっています。ここを作り直す必要はありません。
ただし記号を読めることと、その国の法律を満たしていることは別問題です。たとえば米国は「記号だけ」では原則不十分で、英語の文言が求められます。反対に欧州では洗濯表示そのものが法律上の義務ではなく、義務なのは繊維組成の表示です。国によって「何が義務か」が違うため、次の章から国別に見ていきます。
2. 米国向け——英語の文言と繊維・原産国・表示者
米国では、衣類の表示は連邦取引委員会(FTC)の規則で決まっています。実務で押さえるべき要点は次の3つです。
ケア表示は英語の文言が基本
米国のケアラベル規則は、洗濯・乾燥・アイロン・漂白・ドライクリーニングの取扱いを「英語の言葉で」示すことを求めています。記号(米国ではASTMの記号体系)を併用することはできますが、日本の感覚で「記号だけを並べたラベル」を作ると要件を満たしません。私たちは米国向けには、記号の下に必ず英語の文言を1行ずつ添えています。
繊維組成・原産国・事業者の識別
ケア表示とは別に、繊維製品の表示に関する法律で、繊維の名称と混率、原産国、事業者の識別(社名またはFTCに登録した番号)を表示することが求められます。原産国は「Made in Japan」「Made in China」のように書き、ラベルは製品に恒久的に付いている必要があります。日本の品質表示の「表示者名」にあたる部分は、英語表記の社名で対応するのが最も単純です。
3. 欧州向け——義務は「繊維組成を現地言語で」
欧州連合の繊維製品規則では、繊維の名称と組成を表示することが義務で、しかもその表記は販売する加盟国の公用語で行う必要があります。英語だけのラベルで通るのは英語が公用語の国に限られ、ドイツで売るならドイツ語、フランスで売るならフランス語の繊維名が要ります。
一方で、洗濯表示(ケア記号)はEU全体で見ると法的義務ではなく、業界の自主的な表示です。記号の体系はISO 3758と同じなので、日本で使っている記号をそのまま置けば消費者には伝わります。原産国の表示も、EU全体では義務化されていません。
ここで注意したいのが繊維名の呼び方です。同じ繊維でも米国と欧州で使う名称が違うものがあり、たとえば伸縮性の繊維は米国では「spandex」、欧州では「elastane」と書くのが一般的です。日本の「ポリウレタン」を直訳して「polyurethane」と書くと、どちらの市場でも通じにくくなります。
4. 英語ケアラベルの書き方——文言と繊維名の対応表
ここからは実際にラベルを作るときの対応表です。文言は米国向けを想定した一般的な言い回しで、記号と併記して使います。
取扱い文言の例
| 日本語の内容 | 英語の文言例 |
|---|---|
| 液温40℃を限度に洗濯機で弱い洗い | Machine wash warm, gentle cycle |
| 液温30℃を限度に手洗い | Hand wash cold |
| 塩素系漂白剤の使用禁止(酸素系は可) | Only non-chlorine bleach when needed |
| 漂白禁止 | Do not bleach |
| タンブル乾燥は低温で | Tumble dry low |
| タンブル乾燥禁止 | Do not tumble dry |
| 日陰でつり干し | Line dry in shade |
| アイロンは低温で | Iron low |
| ドライクリーニング禁止 | Do not dry clean |
温度の言い方は、米国では数値ではなく「cold / warm / hot」で書くのが慣習です。数値をそのまま書きたい場合は、記号側の数字(30・40など)に任せて、文言は「cold」「warm」でそろえると自然に読めます。
繊維名の英語表記
| 日本の表記 | 米国での一般的な表記 | 欧州での一般的な表記 |
|---|---|---|
| 綿 | Cotton | Cotton |
| ポリエステル | Polyester | Polyester |
| ナイロン | Nylon | Polyamide |
| レーヨン | Rayon | Viscose |
| ポリウレタン | Spandex | Elastane |
| アクリル | Acrylic | Acrylic |
| 毛 | Wool | Wool |
| 麻(亜麻) | Linen | Linen |
混率は「100% Cotton」「95% Cotton 5% Spandex」のように、割合の大きい順に書きます。日本の表示と同じ考え方なので、数字はそのまま流用できます。
5. 国内向けと海外向けを1枚にするか、分けるか
最後に、ラベルの枚数をどうするかという実務上の判断です。私たちが案内している目安は次の通りです。
- 国内が主で、海外は越境ECで少量——国内向けの日本語ラベルに、英語の取扱い文言と英語の繊維名を追加した「日英併記の1枚」で対応する。サイズは大きくなるが、在庫を分けずに済む
- 米国や欧州に本格的に出す——仕向地ごとにラベルを分ける。欧州向けは販売国の言語で繊維名が必要になるため、日英併記では足りない。生産段階で仕向地別に縫い付けるか、現地で付け替える
- どちらでも共通する原則——日本で販売する分には、家庭用品品質表示法に基づく日本語の表示が必ず必要。英語ラベルだけの製品を日本国内で売ることはできない
越境ECの場合、輸入者側の法規制は最終的に販売者の責任になります。私たちがラベルの手配で確認するのは「どの国で、誰が販売者として売るか」で、そこが決まればラベルの構成は自動的に決まります。
まとめ
海外販売の洗濯表示は、記号を作り直す話ではなく、「文言・繊維名・表示者と原産国」を仕向地のルールに合わせて足す話です。米国は英語の文言と事業者の識別、欧州は現地言語の繊維組成、どちらも日本のラベルに追加する形で組み立てれば、記号は共通のまま使えます。まず日本向けにJIS L0001で正しい記号を作り、その上に仕向地の要件を重ねる、という順番で進めてください。