「何回か洗ったら、洗濯ネームの文字が薄くなって読めなくなった」「記号の線がにじんで、点の数が分からない」。洗濯ネームの印刷の不具合は、販売してしばらくたってから、お客様の声で気付くことが多い問題です。洗濯表示が読めなくなれば、表示を付けた意味がなくなってしまいます。
結論から書きます。洗濯ネームの印刷が消える・にじむ原因の多くは、ネームの素材と印刷方法の組み合わせが合っていないことです。そこに摩擦・熱・溶剤と、細すぎる文字が重なると、不具合が表に出ます。私たちはアパレルOEM会社として、ネームの専門工場と相談しながら素材と印刷方法を選んでいます。その現場目線で、原因と対策を整理します。
1. 素材と印刷方法の相性
洗濯ネームは、テープ状の生地に文字や記号を印刷して作ります。よく使われるのは、ナイロンやポリエステルのサテン、タフタ、綿のテープなどです。印刷方法は、熱でインクを転写する方法や、版を使って刷る方法などがあり、素材ごとに向き不向きがあります。
- 表面がなめらかな化学繊維のテープ——インクが表面に均一に乗り、細かい文字もくっきり出やすい組み合わせです。ただし、インクの種類が素材に合っていないと、摩擦ではがれやすくなります
- 綿のテープ——風合いはやわらかい一方、表面に凹凸があり、インクが繊維に沿ってにじみやすくなります。細かい記号には不向きなことがあります
素材ごとの風合いや使い分けは、別の記事で触れています。ここで大切なのは、素材を決めたら、その素材に合った印刷方法とインクを工場に選んでもらうことです。
2. 摩擦による消え
洗濯機の中では、ネームが他の衣類や洗濯槽とこすれ続けます。インクが表面に乗っているだけの状態だと、この摩擦で少しずつ削れていきます。着用中も、首の後ろや脇のネームは肌や下着とこすれます。消えやすいのは、文字の端や記号の細い線からです。
3. 熱と溶剤による変化
乾燥機の熱やアイロンの熱で、インクがやわらかくなり、はがれたりにじんだりすることがあります。また、ドライクリーニングの溶剤でインクが溶ける組み合わせもあります。製品の洗濯表示でタンブル乾燥やドライクリーニングを「可」にしているなら、ネームの印刷もその処理に耐えなければなりません。製品の表示と、ネームの耐久性をそろえて考えることが大切です。
4. 文字と記号の設計による不具合
素材と印刷方法が合っていても、デザインの段階で不具合を招くことがあります。
- 文字が小さすぎる——少しにじんだだけで、つぶれて読めなくなります
- 線が細すぎる——記号の下線や点が消えると、意味が変わってしまいます
- 記号の間隔が狭い——にじんだときに隣どうしがくっつきます
洗濯表示の記号は、点1つと点2つ、下線1本と2本の違いで意味が変わります。少しのかすれやにじみで読み違えられないよう、余裕のある大きさで配置してください。
5. 家庭用プリンターでの自作の限界
布用の転写シートや、プリンター対応の布シートを使えば、家庭用プリンターでもネームを作ることはできます。ただ、洗濯を繰り返したときの耐久性は、専門の印刷と比べて低いことが多く、販売する製品には向かない場合があります。試作や少量の確認用として使い、販売用は耐洗性を確かめた方法で作るのが安全です。
6. サンプル洗いで確かめる
不具合を防ぐ最も確実な方法は、量産の前にネームを付けたサンプルを洗うことです。製品の洗濯表示どおりの方法で何度か洗い、文字の濃さ、記号のにじみ、端のはがれを確認します。ドライクリーニングを可にする製品なら、その処理後の状態も確かめられると安心です。発注先にサンプルを依頼できるかは、早めに相談しておいてください。
7. 不具合が見つかったときの直し方
サンプル洗いで文字が薄くなったりにじんだりした場合は、原因によって打ち手が変わります。摩擦で消えるならインクや印刷方法の変更、にじむなら文字の大きさや線の太さの見直し、溶剤で溶けるならインクの変更か、製品のクリーニング記号の見直しを検討します。どこを変えるかは工場と相談し、変更後にもう一度洗って確かめてください。一度で決めきろうとせず、確かめて直す工程を予定に入れておくと、量産の直前に慌てずに済みます。